『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(Heartbreak Ridge)は、1986年公開のアメリカ映画。クリント・イーストウッド監督・主演。グレナダ侵攻をテーマにしている。
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Heartbreak Ridge (1986) / ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場のあらすじ
1.平和の中のハイウェイ
朝鮮戦争を皮切りに、数々の戦場を渡り歩いた、アメリカ海兵隊古参一等軍曹トム・ハイウェイ(クリント・イーストウッド)は、平和な現代社会では浮いた存在となりつつあった。話は留置所の場面から始まる。ハイウェイは酔っ払って喧嘩した上に警察のパトカーに放尿して逮捕されたのだ。檻の中でも彼は数々の武勇伝に話を咲かせ、百戦練磨の腕っ節の強さを見せ付ける。裁判でも朝鮮戦争のときに与えられた名誉勲章に免じて罰金100ドルで放免となる。そんなハイウェイ軍曹に、彼の古巣である第二海兵師団第二偵察大隊第二偵察小隊(ノースカロライナ州キャンプ・レジューン)へ復帰するようにと辞令が下った。
2.偵察小隊とハイウェイ
ハイウェイはバスで赴任先へ向ったが、途中、一人の「ロックンロールの帝王」と名乗る黒人青年(マリオ・ヴァン・ピーブルズ)と顔見知りとなる。しかし、ドライブインで休憩中に、その「ロックンロールの帝王」にまんまと食事代を持ち逃げされたあげく、バスにも置いてけぼりを食わされる。なんとかキャンプ・レジューンに到着したハイウェイ軍曹を待っていたのは、士官学校卒で書類馬鹿の中隊長パワーズ少佐(エヴェレット・マッギル)と出来損ないの戦闘未経験の兵士たちだった。その兵士の中に、なんとあの「ロックンロールの帝王」がいたのだ。ハイウェイはパワーズ少佐に睨まれながらも、彼らに海兵として海兵らしく戦えるようにとことん鍛えなおしていく。その訓練に、今までの軍曹がやらなかった実戦さながらの実銃を用いた訓練を取り入れた。それはアメリカ海兵隊にとって敵となりうる人たちが好んで使用する「AK-47突撃銃」(別名:カラシニコフ銃)を兵士たちの至近距離で撃ち、その発射音を覚えさせるというものだった。このことはそのあとの訓練でも触れられ、またグレナダ侵攻作戦のときには、未経験な彼らに戦場での恐怖の中で勇気を与えていく。訓練中もハイウェイ軍曹のやり方がパワーズ少佐との確執を拡大させる。ある戦闘訓練のとき、パワーズ少佐率いる第一小隊とハイウェイ率いる第二小隊がかち合い争い(喧嘩)となる。最終的に指揮官同士の戦いにもつれ込み、パワーズ少佐とハイウェイ軍曹の一騎討ちとなった。パワーズ少佐は士官学校出のエリートとはいえ、フットボールで鍛えたという体格は、老軍曹ハイウェイを打ち負かすと思えた。しかし、ハイウェイは本物の戦争を幾度と戦い、数知れぬ死に目に遭って来た男である。素手の格闘はあっという間にパワーズ少佐を打ち負かしてしまう。
3.戦場のハイウェイ
そんな海兵隊に非常呼集がかけられた。それまで何度も訓練の非常呼集があったので、海兵たちはまた訓練の一環と思ったが、それはなんと実戦のための正真正銘の呼集であった。実際に起こった「グレナダ侵攻作戦」である。戦争未経験の彼らにとって、この作戦への参加は、色々な意味で新鮮だった。救出したアメリカ人学生に熱烈に歓迎されたり、目の前で実弾が飛び交うという光景。そして自分の撃った弾で敵兵が死に、仲間も敵に倒されていく。戦いが終わりリング少尉(ボイド・ゲインズ)を始めとして若い海兵らの成長を、腰を下ろして葉巻を咥えて眺めるハイウェイ軍曹の姿がそこにある。ハイウェイにとって、その実戦こそが彼らを一人前の海兵に育てるための訓練として位置づけていたようであった。
4.素顔のハイウェイ
ハイウェイは、このような根っからの軍人であると同時に、かつて一人の妻を持った夫でもあった。原隊復帰と同時に、過去の躓いてしまった夫婦関係にも話は及ぶ。前妻アギー(マーシャ・メイソン)との再会。戦争に取られた夫を待つ妻の気持ち。戦場で、一人でも戦い続ける男の気持ち。その過去の失敗にどう決着をつけるのかも、この映画の裏のテーマとなっている。
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